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大阪地方裁判所 平成3年(ワ)2811号 判決

原告

奥村マサ江

右訴訟代理人弁護士

井上英昭

大川一夫

幸長裕美

被告

株式会社松筒自動車学校

右代表者代表取締役

吹田みどり

右訴訟代理人弁護士

竹林節治

畑守人

中川克己

福島正

松下守男

主文

一  原・被告間において、原告が被告に対して労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

二  被告は、原告に対し、金三三一万八八五八円及び内金二九五万五六三九円に対する平成六年八月二六日から右支払済みに至るまで年六分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

四  この判決は第二項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

主文と同旨。

第二事案の概要

本件は、被告(以下、被告会社ともいう。)から解雇された原告が、右解雇につき、〈1〉被告の主張する解雇事由は存在しない、〈2〉解雇は不当労働行為である、〈3〉解雇権を濫用したものであるから無効であるとして、原告を従業員として扱わない被告に対し、原告が労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金とこれに対する商事法定利率による遅延損害金の支払いを求めた事案である。

一  争いのない事実

1  被告は、自動車の教習などを目的とする株式会社である。

2  原告は、平成元年八月二一日、被告に期限の定めなく事務員として雇用され、受付窓口において、入学生等に対する受付業務、生徒に対する技能券等の販売業務、金銭のレジ業務などを担当していた。

3  被告は、原告と同一職種の従業員に対し、賃金支給日を毎月一五日締め切りの二五日払いとして賃金を支給し、平成二年九月二一日以降、別表(略)Ⅰ記載のとおり、賃上げを行ってきた。

4  被告は、原告に対し、平成二年九月二〇日、被告の就業規則一二条6「教習生より、しばしば教習について苦情の申入れがあるなど、技能、能率、態度が著しく不良で、将来改善の見込みがないと認めたとき」、7「その他前各号に準ずることがあったとき」の解雇事由があるとして、三〇日分の平均賃金を支払って解雇する旨の意思表示をした(以下、本件解雇という。)。

5  被告は、原告に対し、平成二年九月二一日以降、原告の就労を拒否し、原告の従業員としての地位を争い、別表(略)Ⅱ記載のとおり、仮払金額欄記載の金額のみ支払った。右解雇が無効であれば原告に生ずる平成六年八月二五日時点の右仮払金を除く未払賃金額は二九五万五六三九円であり、確定遅延損害金額は三六万三二一九円である。

二  主たる争点

1  就業規則所定の解雇事由の存否

(被告の主張)

(一) 被告は、平成元年八月二一日、被告会社の従業員で組織する全自動車教習所労働組合(以下、全自教という。)松筒分会(以下、分会という。)の上部団体である総評全国一般大阪地方連合会(以下、地連という。)の福田委員長から、原告が決算手前までひとりでできる人であるとの紹介・推薦を受けて、会計、レジ及び経理の担当者として原告を雇用した。

(二) 原告は、被告会社に雇用された後、会計、レジ及び教習券管理の唯一の担当者としてその業務に従事しながら、多額の過不足金及び教習券の余剰又は不足等の事態を毎日のように発生させ、その調査のために他の事務職員や被告会社取締役吹田みどり(当時)(以下、吹田という。)が忙殺されるという日々が続き、被告会社の経営及び事務を混乱させた。

(三) (一次的解雇事由)

原告は、(四)記載のようなミスを犯し、もって(二)記載のような混乱を生ぜしめたものであって、これらの事実に徴表されるように、被告の業務について著しく不適格である。

(四) (二次的解雇事由)

(1) 原告は、平成二年において、次のとおりレジの記録と現金の実際の額について食い違いを生じさせるミスを継続的に発生させた。なお、以下にあげる日付は、前日のレジ精算後(概ね午後二時ころ)から当日の精算時(同様に午後二時ころ)までのことをいう。

一月九日 レジの記録よりも実際の現金が五万円多い(以下、このような場合を五万円の余りという。なお、レジの記録よりも現金が足りない場合を不足という。)

一月一〇日 四万九五〇〇円の不足

一月一一日 四二〇〇円の余り

一月一三日 八万〇四〇〇円の余り

一月一六日 六万一七〇〇円の余り

一月二〇日 二六万〇一〇〇円の不足

一月二四日 二五万二一〇〇円の余り

一月二七日 一〇〇〇円の余り

一月三〇日 五九〇円の余り

一月三一日 五〇〇円の余り

二月二日 五〇円の余り

二月三日 四万九九五〇円の余り

二月六日 五万八六〇〇円の不足

二月七日 五万八六〇〇円の余り

二月一〇日 八三〇〇円の余り

二月一四日 四五〇円の不足

二月一六日 五三〇〇円の不足

二月一七日 一万円の余り

二月二四日 一万〇六〇〇円の不足

二月二六日 一万二〇〇〇円の余り

三月一日 六七〇〇円の不足

三月二日 六七〇〇円の余り

三月八日 二一万円の余り

三月九日 四三〇〇円の余り

三月一〇日 二四万六五〇〇円の余り

三月一二日 一万円の不足

三月一三日 二二万七四〇〇円の不足

三月二六日 二一万九八〇〇円の不足

三月三〇日 二一万九八〇〇円の余り

四月二日 二万一五〇〇円の余り

四月三日 五五〇〇円の不足

四月九日 九六〇〇円の不足

四月一九日 五万円の余り

四月二〇日 一三万六七〇〇円の不足

四月二一日 一三万六七〇〇円の余り

五月一〇日 四三〇〇円の余り

五月一九日 三七万六七〇〇円の不足

五月二一日 三七万九六〇〇円の余り

五月二六日 三〇〇〇円の不足

五月二九日 三〇〇〇円の余り

五月三〇日 二六万円の余り

五月三一日 二六万円の不足

六月四日 四〇〇〇円の不足

六月五日 四〇〇〇円の余り

六月一二日 四万七七〇〇円の不足

六月一三日 五万二三〇〇円の余り

六月一六日 二〇〇円の余り

六月一八日 四五〇〇円の不足

六月一九日 四五〇〇円の余り

六月二一日 七五〇〇円の余り

六月二二日 三〇〇〇円の不足

六月二九日 五〇〇〇円の不足

六月三〇日 一〇〇〇円の不足

七月二日 五〇〇〇円の余り

(2) 原告は、平成二年において、次のとおり教習券などの過発行又は行方不明などを継続的に発生させた。

一月九日 技能教習券(一枚四三〇〇円)一〇二枚不明

一月一一日 修了検定券一枚発行漏れ

一月一二日 技能教習券二枚不明

一月一三日 技能教習券九九枚不明

修了検定券二枚発行漏れ

卒業検定券一枚発行漏れ

学科試験券一枚発行漏れ

卒業証明券一枚発行漏れ

一月三〇日 卒業検定券渡し忘れ

技能教習券一枚不明

二月二八日 卒業証明券一枚不明

三月九日 技能教習券二枚不明

三月二六日 技能教習券四枚発行漏れ

卒業証明券二枚発行漏れ

四月七日 技能教習券一枚不明

五月二一日 技能教習券一〇枚不明

五月二七日 技能教習券一七枚過発行

八月四日 技能教習券二枚不明

(3) 原告は、被告のレジ業務に関し、クレジット・カード関係の事務処理を担当していたところ、右処理に当たり、被告が再三行っていた、〈1〉一〇万円を超える売上についてのクレジット・カード会社への連絡及び承認の取得、〈2〉カード利用者には領収書を発行せずに、「利用控え」「お客様控え」だけを渡す、〈3〉伝票の印の確認、〈4〉売上票を現金同様に慎重に保管するということなどの指示・指導を守れず、ミスを再三繰り返した。平成二年における右のミスは次のとおりである。

一月一六日 VISAカードの一〇万円以上の利用に際し、カード会社の承認の取得を怠った。

四月五日 UCカードで受け付けた申込をJCBの用紙に記載し、JCBに送付した。

四月二一日 担当者として印鑑を押捺するのを忘れたままJCBに売上票でなく、加盟店控えを送付しようとした

同日 JCBカード利用者に印紙まで貼って領収証を渡した

六月六日 事務職を兼任している中村指導員に対し、クレジットカード利用者に領収証を発行することを指示した。

六月一九日 JCB加盟店控えを教習生に渡した。

七月一〇日 UCカードの売上を住友カード(VISAカード)の売上としてレジを処理した。

七月二七日 大信販ローンの申込書を大信販に送付するのを忘れた。

七月三一日 VISAカードの売上票を机の中に放置していた。

住友ローンの七月一六日入金分について控えもカード会社に送付した。

八月五日 カードの売上票を机の中に放置していた。

(4) 原告は、被告会社従業員の給与計算に当たって、残業時間などの計算処理を担当しながら、職務を遅滞させることが常態であった。

(5) 原告は、入学希望者あるいは在校者に対する適切な接客態度に欠けたため、入学希望者・在校者と学校との間で無用なトラブルを発生させた。

(6) 原告は、受付業務を行う際、免許取得のための視力などの検査を担当しながら、検査をしないままに入学手続を行い、また、視力障害などにより入学できない者について入学手続を行った。

(原告の主張)

(一) 原告は、被告会社において、レジ業務を含む受付業務の担当者として売上金等の管理、日々におけるレジ、精算業務、技能教習券等の管理等の業務に従事していたが、これらを責任者として担当していたのではない。被告会社においては、原告を含めその時受付業務にかかわった一定の者がその場の状況に応じてレジを担当していたのである。

被告は、日計表に過不足が生じた日を選び、原告の責任であると主張する。しかし、レジ業務は、原告のみが担当するものではなく数人の事務員で分担して行っており、そもそも原告の行為に起因するものであると特定できていない。仮に、原告が担当したものであっても、レジの単純な打ち間違いのように後に訂正処理されて何ら業務に支障を生じていないものも問題とされており、解雇事由につながるミスはない。

被告は、従来から社員に対する教育指導を十分しておらず、管理者である吹田も自己の責務を懈怠していたのであり、ミスが生じたのは、従業員個人の資質によるものではなく、被告の管理体制がずさんであったことに起因している。

原告の入社前は、女子事務員が四人体制であったのに対し、被告がミスを問題とする平成二年一月以降は、女子事務員は原告と竹森の二名という要員不足の状態であり、新規女子事務員が採用されて四人体制に戻った平成二年七月以降は、ミスの発生が減少しているのであり、ミスの発生の原因は、被告会社の人員体制の不備に起因するものである。

原告は、受付・レジ業務の責任者とされたことはなく、他の女子事務員の上司であったわけでもないから、他の者のミスについてまで管理責任を問われることはない。

(二) 被告主張の各事実についての原告の認否等は次のとおりである。

(1) レジの記録と現金の過不足について

被告主張のとおり日計表の過不足欄に過不足金額の記載のある(ただし、平成二年三月一三日、同年六月一二日の過不足金の記載を除く。)ことは認め、それが原告のミスに起因するものであることは否認する。以下、個々の主張について反論する。

一月九日 五万円多い。

(証拠略)(吹田みどりの報告書2)では、原告が中村から依頼されたレジ入力を忘れたものであるとしているが、このような事実はなく、かえって、吹田は、右日計表の合計欄の記入をミスしているほどである。

一月一〇日 四万九五〇〇円の不足

吹田は、この日の日計表においても合計欄の記入をミスしており、また、レジの在高登録も間違っている。

一月一一日 四二〇〇円の余り

本件解雇通知では「一月九日」とされていたものである。

一月一六日 六万一七〇〇円の余り

(証拠略)(みどりのノート)では九万五四〇〇円の不足金となっているものである。

一月二〇日 二六万〇一〇〇円の不足

同日の日計表の過不足欄に不足金として二六万〇一〇〇円の記載があり、うち二五万七一〇〇円は、原告が万一の返金を考えてレジにしまっていた入学申込者からの預かり金によるものであるが、残りの三〇〇〇円は原因不明であり、原告に起因するものとはいえない。

一月二四日 二五万二一〇〇円の余り

右の金額は、一月二〇日の訂正分と原因不明のその他の五〇〇〇円の不足金によるものであり、原告のミスとはいえない。

一月三〇日 五九〇円の余り

被告も原因不明としている。

一月三一日 五〇〇円の余り

被告も原因を明らかにしていない。

二月二日 五〇円の余り

被告も原因不明としている。

二月三日 四万九九五〇円の余り

被告も原因不明としている。

二月六日 五万八六〇〇円の不足

原告は、二月五日と二月六日は病気で欠勤していたものである。

なお、この点に関し、(証拠略)(吹田みどりの報告書3)に書いてある事実は全くの捏造であり、原告が指導員の娘の入学に関して五万円を預かった事実はない。

二月七日 五万八六〇〇円の余り

日計表の右の記載は、前日の訂正にすぎず、原告のミスであることは否認する。

二月一〇日 八三〇〇円の余り

この点に関する(証拠略)(吹田みどりの報告書3)に書いてある事実は、二月一〇日が土曜日であることを失念した全くの捏造である。

二月一六日 五三〇〇円の不足

被告もその原因を明らかにしていない。

二月一七日 一万円の余り

被告も原因不明としている。

二月二四日 一万〇六〇〇円の不足

被告も原因を明らかにしていない。

二月二六日 一万二〇〇〇円の余り

被告も原因不明としている。

三月一日 六七〇〇円の不足

日計表の右の記載は、原告が、他の人が返品を受け付けて返金した券を販売した際に、受け取った代金をレジ打ちしたために、計算上現金の不足となったものであり、原因も判明し、事務の混乱は生じていない。

なお、このように返品された券を現金と同様に取り扱うシステムは、後にすべてレジ処理するように変更されたように、経理処理上問題であり、当時から原告はすべてレジ処理する方法で処理していたために、前記のとおり計算上の不足金を出してしまったにすぎない。

三月二日 六七〇〇円の余り

日計表の右の記載は、前日の訂正であり、原告のミスであることは否認する。

三月八日 二一万円の余り

被告も原因を明らかにし得ていない。

三月九日 四三〇〇円の余り

被告も原因が特定できていないことを認めている。

三月一〇日 二四万六五〇〇円の余り

同日の日計表の記載は認めるが、これは、原告が住友カードの人の取消を現金の取消としてレジ操作したために発生した二五万五一〇〇円の余剰と、技能教習券の返品分をレジマイしたための八六〇〇円の不足によるものであり、当時原告が調べて原因も判明し、事務の混乱は生じていない。

三月一二日 一万円の不足

被告も原因不明としている。

三月一三日 二二万七四〇〇円の不足

同日の日計表の過不足欄は余剰金二万七七〇〇円となっているが、その原因は被告も不明であり、これが原告のミスであることは否認する。

なお、「二二万七四〇〇円の不足」というのは、三月一〇日の余剰金二五万五一〇〇円の訂正分に同日発生した余剰金二万七七〇〇円を差引したものである。

三月二六日 二一万九八〇〇円の不足

原告以外の者が券売機の売上を日計表へ書き忘れたものであり、原告のミスであることは否認する。

三月三〇日 二一万九八〇〇円の余り

三月二六日の訂正であり、原告のミスであることは否認する。

四月二日 二万一五〇〇円の余り

被告も原因不明としている。

四月三日 五五〇〇円の不足

被告も原因不明としている。

四月九日 九六〇〇円の不足

右不足の発生は、原告以外の者によるものであり、原告のミスであることは否認する。

四月一九日 五万円の余り

吹田が釣り銭準備金として五万円を持ってきてその記入を忘れたことによるものであり、原告のミスであることは否認する。

四月二〇日 一三万六七〇〇円の不足

原告の在高登録ミスに起因することは認めるが、右不足金はそもそもその後の吹田の処理によって計算上作り出されたものである。

四月二一日 一三万六七〇〇円の余り

同日の日計表の右の記載は、前日の訂正であり、原告のミスであることは否認する。

五月一〇日 四三〇〇円の余り

同日の日計表の過不足欄の余剰金四三〇〇円の記載は、原告がレジ精算中に販売した教習券について、券日報に記入したもののレジに打ちこまなかったことによるものであるが、その原因も判明しており、事務の混乱は生じていない。

五月一九日 三七万六七〇〇円不足

同日の日計表の過不足欄の不足金三七万六七〇〇円の記載は、原告が、精算前に、すでに経理に届けていた券売機の売上金を日計表に記載していなかったことに気づき、吹田みどりに尋ねにいったにもかかわらず教えてもらえず、結局、同女の嫌がらせによって日計表の上で不足金を計上しなければならなくなったものにすぎない。

五月二一日 三七万九六〇〇円余り

同日の日計表の過不足欄の余剰金三七万九六〇〇円の記載のうち三七万六七〇〇円は前営業日である五月一九日の訂正であり、残りの二九〇〇円の余剰金は被告においても原因不明である。

五月二六日 三〇〇〇円の不足

被告も原因を明らかにし得ていない。

なお、この「三〇〇〇円の不足」は、本件解雇通知では「六〇〇〇円の不足」とされていたものである。

五月二九日 三〇〇〇円の余り

同日の日計表の過不足欄の余剰金三〇〇〇円の記載は、五月二六日の訂正であり、原告のミスであることは否認する。なお、この「三〇〇〇円の余り」も、本件解雇通知では「六〇〇〇円の余り」とされていたものである。

五月三〇日 二六万円の余り

前日、吹田みどりがレジを締めた時に回収するのを忘れた二六万円が余剰金として計上されているものであって、原告のミスによるものではない。

五月三一日 二六万円の不足

同日の日計表の過不足欄の不足金二六万円の記載は、前日の余剰金を訂正するために吹田が日計表の記載を操作したことによって発生しているものであり、原告のミスによるものではない。

六月四日 四〇〇〇円の不足

同日の日計表の過不足欄の不足金四〇〇〇円の記載は、原告が返品された券を現金として扱わずに処理したことによるもので、同日の日計表の欄外に「もどった券2枚分」と注記しているように、何ら原告のミスではない。

六月五日 四〇〇〇円の余り

同日の日計表の過不足欄の余剰金四〇〇〇円の記載は、前日の訂正であり、原告のミスではない。

六月一二日 四万七七〇〇円の不足

同日の日計表の過不足欄に過不足金はなく、吹田が、あれこれ数字をいじったあげくに、一旦余剰金として四万七七〇〇円を計上した後、自分の間違いに気づいて抹消しているものである。

六月一三日 五万二三〇〇円の余り

同日の日計表の過不足欄の余剰金五万二三〇〇円の記載のうち四万七七〇〇円は、釣り銭準備金のレジ打ち間違いによる計算上の余剰金であり、また、残りの四六〇〇円の余剰金はそもそも原因不明であり、いずれも誰の行為によるものか全く不明である。

六月一六日 二〇〇円の余り

被告もいまだに原因を明らかにし得ていない。

六月一八日 四五〇〇円の不足

同日の日計表の過不足欄の不足金四五〇〇円の記載は、返品済みの教習券に関する六月八日付けの回覧による指示を守らなかった人によって発生しているものであり、原告のミスによるものではない。

六月一九日 四五〇〇円の余り

同日の日計表の過不足欄の余剰金四五〇〇円の記載は、前日の訂正であり、原告のミスではない。

六月二一日 七五〇〇円の余り

原告は、当日、有給休暇で休んでおり、原告のミスによるものでない。

六月二二日 三〇〇〇円の不足

被告も原因を明らかにし得ていない。

六月二九日 五〇〇〇円の不足

同日の日計表の過不足欄の不足金五〇〇〇円の記載は、釣り銭の一部がたまたまレジの奥に入れてあったことから、死角で見えず、原告が在高登録をする際にこれを除いて在高登録をしたことによるものであり、実際に不足金を発生させたものでないばかりか、原因も判明し、事務に混乱も生じさせていない。

六月三〇日 一〇〇〇円の不足

被告も根拠をもって原因を明らかにし得ていない。

七月二日 五〇〇〇円の余り

同日の日計表の過不足欄の余剰金五〇〇〇円の記載は、六月二九日の訂正であり、原告のミスであることは否認する。

(2) 教習券等の発行関係のミス等の主張について

教習券等の発行関係のミス等の主張は、それが原告のミスによるものであることは否認し、個別の主張は次のとおりである。

イ 一月一二日「技能教習券二枚不明」について

原告以外の者のミスであることが明らかになっており、原告のミスでない。

ロ 一月一三日 技能教習券九九枚不明、修了検定券二枚発行もれ、卒業検定券一枚発行もれ、学科試験券一枚発行もれ、卒業証明券一枚発行もれ

技能教習券九九枚不明は、原告以外の者のミスであることが明らかになっており、その他についてもいずれも原告のミスによるものでない。

ハ 三月二六日技能教習券四枚発行もれ、卒業証明券二枚発行もれ

原告のミスによるものでない。なお、本件解雇通知及び仮処分事件における被告の準備書面では「技能教習券四枚発行もれ」ではなく、「D/T券四枚発行もれ」とされていた。

ニ 四月七日 技能教習券一枚不明

原告のミスによるものでなく、被告も原因不明と言っているものである。

ホ 五月二一日 技能教習券一〇枚不明

同日の券日報に間違いはなく、原告にミスはない。なお、(証拠略)(吹田みどりの報告書8)では、「五月一九日」としているが、この日であっても原告のミスであることは否認する。

ヘ 五月二七日 技能教習券一七枚過発行

原告のミスであることは否認する。なお、本件解雇通知等では「八月二七日」とされているものであり、また、仮処分事件における吹田みどりの報告書では「五月一九日」とも記載されているものであるが、いずれの日であっても原告のミスであることは否認する。

ト 八月四日 技能教習券二枚不明

原告のミスであることは否認する。なお、本件解雇通知等では「八月五日」とされているものであり、また、仮処分事件における被告の第二準備書面では「八月六日」とも記載されているものであるが、いずれの日であっても原告のミスであることは否認する。

(3) クレジット・カード関係の事務処理ミスの主張について

イ 一月一六日のミスの主張について

原告が、その頃、VISAカードの一〇万円以上の利用に際し、カード会社の承認の取得を怠った事実は認める。しかし、原告は、この年の年初から初めてクレジット・カードを扱うようになり、このとき不慣れなために確認もれをしてしまったものでこれが初めてのことであった。三回目ではない。なお、その後は同様の間違いはしていない。

ロ 四月五日のミスの主張について

原告が、四月四日、UCカードで受け付けた申込をJCBの用紙に記載し、JCBに送付してしまった事実は認める。しかし、直ちに訂正して処理を行い、入金の遅れは生じていない。

ハ 四月二一日の「担当者として印鑑を押捺するのを忘れたままJCBに売上票でなく、加盟店控えを送付しようとした」とのミスについて右事実は否認する。そもそもJCBの売上集計票には印鑑を押印する欄は存在しない。

ニ 四月二一日の「JCBカード利用者に印紙まで貼って領収書を渡した」とのミスの主張について

原告が、そのころ、カード利用者についても印紙を貼った領収書を渡していた事実は認める。しかし、当時は、カードの利用者であっても所定の金額を超えれば印紙を貼った正規の領収書を発行していたものであり、四月二三日から領収書を発行しないように取扱いが変更されたものであって、仮に、この時原告が印紙を貼った領収書を発行していたとしてもミスではない。

ホ 六月一九日のミスの主張について

原告が、そのころ、JCBの加盟店控えを教習生に渡してしまった事実は認める。しかし、その後原告がすぐに気付いて回収しており、混乱は生じていない。

ヘ 七月一〇日のミスの主張について

原告が、レジを打ち間違えた事実は認める。しかし、クレジットカードの処理は正しくなされており、入金も正常になされている。なお、(証拠略)(みどりのノート)に貼付されているメモは捏造されたものである。

ト 七月二七日のミスの主張について

右事実は否認する。これは発見当時から誰が受け付けたか分からなかったものである。

チ 七月三一日のミスの主張について

放置していたことは否認する。レジの中に入れると大きさがあわずにかさばるので机の引き出しに保管していたものである。なお、机の中に保管していたクレジットの売上票は、当日、遅くとも翌日の日計表とともに経理室に届けられていたものである。

リ 「住友ローンの七月一六日入金分について控えもカード会社に送付してしまった」とのミスについて

送付したことは否認する。カード会社の担当者がローン契約書を持って帰った時に、誤って契約書の控えも一緒に持って帰ったのを気付かなかったものである。なお、右の控えは、入金前の七月二日付けで被告会社に返送されており、混乱は生じていない。

ヌ 八月五日のミスの主張について

八月五日は日曜日であり、原告は出勤しておらず、事実そのものを否認する。

2  不当労働行為の成否

(原告の主張)

原告は、分会に所属する組合員であり、地連は全自教の上部団体である。当時、全自教と地連は対立する状態であり、被告は、分会と癒着し、分会とともに、原告が地連のスパイであるとみなして、原告を組合活動や会社から排除しようと考え、本件解雇に及んだものである。

よって、本件解雇は、原告の組合活動ないし分会に対する支配介入行為であるから不当労働行為であって無効である。

(被告の主張)

(一) 原告は、前記のとおり事務処理上のミスが多く、被告は、このような原告のミスのための負担に耐えられなくなり、原告を会計、レジ及び教習券管理等の担当者から外すことを考え、平成元年に分会に対し、原告を右業務から外すことについて了解を求めた。しかし、分会は、地連の了解を得られなかったためか、被告の申し出を了解しなかった。

(二) 今回の解雇に先立ち、被告は、平成二年七月初めに分会に対し、原告を解雇したい旨通告し、分会は、被告と三か月にわたって交渉し、その情報も適切に原告に連絡している。このような経過を経て本件解雇に至ったものであり、原告が分会少数派であるかどうかにかかわらず、被告会社において毎日のように生ずる事務の混乱を放置できないために原告を解雇したものである。原告は、地連と分会の対立が先行した上で本件解雇がなされたように主張するが、むしろ、地連の福田委員長が不適格な原告を推薦してきたことによる被告会社における事務の混乱についての分会の訴えを真摯に受け取らなかったことが、地連と分会の対立の大きな一因をなしているものである。

よって、原告の不当労働行為の主張は失当である。

3  解雇権の濫用の成否

(原告の主張)

本件解雇は、前項記載の意図に基づいて行われたものであり、ささいなミスをことさら捉えて解雇事由としているものであって、解雇権を濫用してなされたものである。

(被告の主張)

前記のとおり、本件解雇は、原告の事務処理上のミスが多く、被告がこれによる負担に耐えられなくなり、かつ、配置転換すべき適切な部署もなかったために分会とも協議の上行ったものであって、何ら解雇権を濫用したものでない。

三  証拠関係

本件記録中の証拠に関する目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第三判断

一  主たる争点1(就業規則所定の解雇事由の存否)について

1  前記争いのない事実に証拠(〈証拠略〉)を総合すると、次の事実を認めることができる。

(一) 被告会社には、労働組合として全自教の分会があり、地連がその上部団体であった。原告は、平成元年八月二一日、地連から決算の前の段階まで一応できる経理経験のある者との推薦を受けて被告会社に入社し、分会に所属した。原告は、被告との当初の契約では、職務内容を経理の記帳事務とし、勤務時間を基本的には残業をしない所定内労働のみ(午前九時から午後五時、入社直後からは午前九時半から午後五時半に変更)とするとのことであった。

(二) しかし、原告は、入社後、被告会社の都合から、主として事務所での受付業務に従事することとなり、具体的には、入学申込がなされたときの入学手続(入学願書の記載内容のチェック、視力、色彩識別検査を含む。)、教習券の販売、レジの打込み、レジの締め等のレジ業務、日計表、教習券販売日報(以下、券日報という。)の作成などに従事した。

原告の上司は、経理担当取締役の吹田であり、原告は、受付業務の責任者ではなく、他の女子事務員と同列の地位にあった。

(三) 被告会社における事務所の従業員は、時期によって異なるところ、原告が入社する以前は女子事務員は四名の体制であったが、原告入社後は、平成二年八月まで女子事務員は原告を含めて二名の状態が続いた。そのうち、受付・レジの担当者は次のとおりである。

(1) 平成元年八月二一日から同月末ころまで

中村行宏(以下、中村という。)、田中(両名は男性で技能指導員の見習い期間で事務所の仕事もしていたもの)、原告(ただし、同年八月二二日から)の三名で担当、午後五時三〇分以降(以下、残業時、という。)は中村、田中の二名。レジ業務は、中村、田中の両名が中心となり、原告は補助的立場であった。

原告に対するレジの扱い方についての正式な教育・指導がないため、原告は見よう見まねで覚えた。当時、レジ業務は複数の人で行われていたり、被告会社の小金の支払いをレジの金銭を抜いて払って領収証を入れておくだけである(平成二年四月ころには行われなくなる。)など、責任の所在があいまいであったり、管理に安易な点が見られた。

(2) 平成元年九月ころ

河井きよ子(以下、河井という。)(同年八月二八日入社)、原告の二名で担当し、昼の休憩時(一時から三時まで、交替で担当する。)は中村、田中が加わり、残業時は原告は抜けた。

当初、レジ業務は原告が主として担当し、河井は補助的立場であった。が、同月下旬ころからは、河井が主として行い、原告は補助的立場になった。

(3) 平成元年一〇月ころから同年一二月末ころまで

同年一〇月二日、女子事務員の竹森が入社し、女子事務員は三名となった。河井、竹森、原告の三名で担当し、残業時は原告は抜けた。

レジ業務の中心は河井であり、原告は補助的立場、竹森は配車の仕事をしながらレジ業務を手伝った。

同年一〇月一九日に新しいレジが入り、湯浅課長は、河井に対し、レジの講習を行い練習させた。原告は、河井から二、三回、短時間教えてもらうだけであった。

年末に河井が退職し、新しいレジ業務の操作などについて、竹森に引き継いだが、原告には引継ぎはなされなかった。

(4) 平成二年一月から同年四月中旬まで

竹森、原告が担当し、昼の休憩時は前半は中村、田中、後半は片岡、久保(両名は技能教習員の見習い期間中)が加わった。

竹森が主としてレジ業務を担当した。

女子事務員が二名となり、業務は多忙であった。

(5) 平成二年四月中旬ころから同年六月中旬ころまで

竹森、原告が担当し(五月一四日から一六日までは笠置も加わった。)、昼の休憩時は中村、片岡、久保も加わった。

レジ業務の中心は原告であった。

(6) 平成二年六月中旬から同年八月末まで

伊藤、柳本、原告の三名で担当し、昼の休憩時は竹森が加わり、残業時は竹森、伊藤、柳本でサイクルを組んだ。

女子事務員として柳本が六月一一日に、伊藤が同月二五日に入社し、女子事務員は四名になった。

レジ業務の中心は原告であった。

2  次に、被告が原告の解雇事由として具体的に列挙する平成二年中の行為(主たる争点1(四))について検討する。

(一) 主たる争点1(四)(1)(レジの記録とレジ内の現金の実際額との食い違い)について

主たる争点1(四)(1)のうち、平成二年三月一三日、同年六月一二日を除くその余の日について、被告主張のとおり日計表の過不足金額欄に過不足金額の記載のあることは当事者間に争いがなく、右の事実と弁論の全趣旨を総合すると、右の二日を除くその余の日についてレジの記録とレジ内にある現金額との間に被告主張のとおり食い違いが生じていたことを認めることができる。

(一月九日)

吹田は、原告が中村から依頼された教習生の五万円の入学金のレジ打ち込みを失念したため生じたミスであるという(〈証拠略〉)。

しかし、吹田がその根拠とするところは、中村から原告に依頼した旨聞いたというのであり(〈人証略〉)、他方、中村は、原告に依頼したかについての記憶があいまいであること(〈人証略〉)、吹田は、仮処分時に提出した報告書(〈証拠略〉)において、右の原因を解明できないとしており、中村から原告への依頼について右報告書に記載しなかった理由を合理的に説明できないばかりか(〈証拠略〉)、(証拠略)(みどりのノート)にも記載がないこと、レジ業務は、原告のみが担当していたものでなく、他の担当者によるレジの入力ミスなどにより余剰金が生じた可能性もあること、原告は右の事実を否定していること(〈証拠略〉)に徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用できず、ほかに原告のミスによって右事実が発生したことを認めるに足りる証拠はない。

(一月一〇日)

吹田は、原告が前日に入力をしていなかった五万円の入学金の入力を行い、学科試験の問題集五〇〇円の売上の入力を忘れたため生じたものであるという(〈証拠略〉)。

しかし、前日(一月九日)の五万円の入力を原告が失念したと認めることができないことは前記認定のとおりであること、学科試験の問題集五〇〇円の売上の入力を忘れたとの吹田の供述は推測に過ぎず、その裏付けがないこと、吹田は、(証拠略)において、右の原因を不明としていること、レジ業務は原告のみが担当していたものでないから原告のミスによるとは直ちに断定できないこと、原告はこれを否定していること(〈証拠略〉)に徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用できず、ほかに原告のミスによって右の事実が発生したことを認めるに足りる証拠はない。

(一月一一日)

原告が四二〇〇円の余剰金を生じさせたことを認めるに足りる証拠はない。

(一月一三日)

吹田は、原告が教習生三名からの預かり金一四万円をレジに混入させたこと、教習生の入学手続の入金の入力を誤った金額四万九六〇〇円で行いその後取消を失念したこと及びこの教習生から五〇〇〇円多く徴収したことから生じたものであるという(〈証拠略〉。なお、右の説明によれば、混入した一四万五〇〇〇円から四万九六〇〇円を控除すると九万五四〇〇円の余剰金となり、そうすると、なお、一万五〇〇〇円の不足金が生じないと計算が合わないが、この点については合理的説明がない。)。

これに対し、原告は、教習生の入金の入力を誤ったが、レジの精算後これを取り消しているので問題は起きていないこと、預かり金をレジに混入させたり、五〇〇〇円多く徴収したことはなく、正しく処理しているとし(〈証拠略〉)、また、レジ業務は、原告のみが担当していたものでないから過不足金が生じたとしても原告の行為によるとは直ちに断定できないことからすると、四万九六〇〇円について原告が入力を誤ったが被告業務に支障は生じていないということができ、原告が預かり金をレジに混入させたり、五〇〇〇円多く徴収したとの吹田の説明(〈証拠略〉)は裏付けを欠いて採用できず、ほかに原告のミスによって右の事実が発生したことを認めるに足りる証拠はない。

(一月一六日)

吹田は、余剰金のうち、四万九六〇〇円については、一三日の入力ミスを訂正して取り消したことによるものという(〈証拠略〉)。

しかして、右の金額は、前記のとおり原告がレジ精算後に四万九六〇〇円の入金を取り消して訂正した(〈証拠略〉)ことにより、余剰金が形式的に生じたものにすぎないから、これをもって原告のミスということはできない。

その余の一万二一〇〇円分については、原告がこれを生じさせたことを認めるに足りる証拠はない。

(一月二〇日)

不足金二六万〇一〇〇円のうち二五万七一〇〇円については、教習生の入学申込に際しての預かり金をレジに入金し忘れたことにより生じたものである(〈証拠略〉)ところ、右によって現実の不足金が生じたものではなく、被告の業務に特段の支障が生じたとはいえず、ほかに右支障が生じたことを認めるに足りる証拠はない。

その余の三〇〇〇円分については、原告がこれを生じさせたことを認めるに足りる証拠はない。

(一月二四日)

余剰金二五万二一〇〇円のうち二五万七一〇〇円は、同月二〇日の預かり金を入金して訂正したことによりが形(ママ)式的に生じたものであって(〈証拠略〉)これをもって原告の新たなミスということはできない。

吹田は、その余の五〇〇〇円の不足金は原告が教習生にカードによる支払いの過払分五〇〇〇円をカードの売上票を作成し直さないで現金で返金したことにより生じたものであるという(〈証拠略〉)。

しかし、原告は、これを否定しており(〈証拠略〉)、吹田の右説明も推測に過ぎず裏付けもないことから、右証拠(〈証拠略〉)は採用できず、ほかに原告のミスにより右の事実が発生したことを認めるに足りる証拠はない。

(一月二七日)

吹田は、原告が教習生に一〇〇〇円の釣り銭を渡し忘れたことにより生じたものであり、原告からの報告もあったという(〈証拠略〉)。

しかし、原告はこれを否定し、仮に釣り銭の渡し忘れがあったとしても竹森によるものである旨説明していること(〈証拠略〉)、受付業務は、原告のみが担当していたものではないから、釣り銭の渡し忘れがあったとしても、原告によるものであるとは直ちに断定できないこと、(証拠略)(みどりのノート)には、釣り銭を原告が渡し忘れたとの記載がないことからすると、右証拠(〈証拠略〉)を採用できず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(一月三〇日)

(証拠略)によるも、原告が五九〇円の余剰金を生じさせたことを認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(一月三一日)

原告が五〇〇円の余剰金を生じさせたことを認めるに足りる証拠はない。

(二月二日)

(証拠略)によるも、原告が五〇円の余剰金を生じさせたことを認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(二月三日)

(証拠略)によるも、原告が四万九九五〇円の余剰金を生じさせたことを認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(二月六日、七日)

吹田は、原告が今村指導員から預かった五万円をレジに入金するのを失念したこと、四三〇〇円の教習券二枚分についてレジの入力を当日にしながら在高登録を翌日にしたことにより不足金が生じ、翌日は余剰金となったものであるという(〈証拠略〉)。

しかし、原告は、これを否定し、同月五日と六日は病気で欠勤したこと(〈証拠略〉)、被告は、仮処分時まではこのような主張をせず(証拠略)(みどりのノート)にもこのような記載はなく、本訴において初めて主張したものであるが、これを裏付ける客観的証拠がないことに徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用することはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

また、二月七日の余剰金五万円は、前日六日の誤りを訂正したものであることからすると、これをもって原告のミスとはいえない。

(二月一〇日)

吹田は、修了検定にこの日不合格だった六六一八番の教習生に原告が修了検定券などを販売したものの、入力を忘れたため余剰金八三〇〇円を生じたという(〈証拠略〉)。

しかし、証拠(〈証拠略〉)によれば、この日の修了検定が開始されたときには、既にレジは精算に入っており、この日の分で修了検定券などは販売できないことが認められ、吹田のこの日の分の修了検定券を原告が販売したとの右説明は合理性を欠き、結局、右証拠(〈証拠略〉)は採用できず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(二月一四日)

(証拠略)によるも、原告が四五〇円の不足金を生じさせたことを認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(二月一六日)

吹田は、原告がペーパードライバーの所内講習券の返品をレジ入力せずに返金したために不足金が生じたという(〈証拠略〉)。

しかし、原告は、これを否定していること(〈証拠略〉)、吹田の説明(〈証拠略〉)は推測に基づくものにすぎず、それを裏付ける証拠がないこと、原告のみが券の販売を担当しているわけではないから仮に吹田のいうような行為があったとしても原告が行ったとは直ちに断定できないことに徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用することはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(二月一七日)

(証拠略)によるも、原告が一万円の余剰金を生じさせたことを認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(二月二四日)

吹田は、原告がペーパードライバーの所内講習券二枚分のレジ打ちをしたが、メモリーに入力するまでに電源を切り、精算時にメモリーから消えてしまい、現金のみ返金されて不足金が生じたという(〈証拠略〉)。

しかし、原告は、これを否定していること(〈証拠略〉)、吹田の説明(〈証拠略〉)は推測に基づくものにすぎず、これを裏付ける証拠はないこと、原告のみがレジ業務や券の販売を担当しているわけではないから仮に吹田のいうような行為があったとしても原告が行ったとは直ちに断定できないことに徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用できず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(二月二六日)

(証拠略)によるも、原告が一万二〇〇〇円の余剰金を生じさせたことを認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(三月一日)

吹田は、原告が仮免許学科試験の券を持参して右試験の申込をした教習生二名に対し、レジ窓口で販売したようにレジ入力をしたために生じた不足金であるとし(〈証拠略〉)、(証拠略)(みどりのノート)にもその旨の記載がある。

しかし、(証拠略)によると、仮免許学科試験の券を購入した教習生に対し、現金と同一扱いされている返品券を販売し、その販売をレジに入力したために生じた計算上での不足金であり、返品券を現金と同一視する扱いになっている被告のシステムにより生じた形式的なものに過ぎないことが認められるから、これをもって原告のミスとすることはできない。

(三月二日)

(証拠略)によると、前日、前記のとおり形式上生じた不足金を訂正処理したことにより生じた形式的な余剰金に過ぎず、これをもってミスとすることはできない。

(三月八日)

吹田は、原告が前日に経理室に届けるつもりで別に取ってあった二一万円を経理室に届けず、八日にレジに混入したために生じた余剰金であるという(〈証拠略〉)。

しかし、被告は、仮処分時にはこのような主張はせず、(証拠略)(みどりのノート)にも(証拠略)のような記載はなく、さらに(証拠略)の説明にもこれを裏付ける証拠は何らなく、吹田の推測に過ぎないといえること、加えて原告は、右事実を否定していること(〈証拠略〉)に徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用することはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(三月九日)

(証拠略)によるも、原告が四三〇〇円の余剰金を生じさせたことを認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(三月一〇日)

(証拠略)によると、住友カードによる売上の取消をすべきところ、現金の取消として誤ってレジ処理したため二五万五一〇〇円の余剰金を生じたこと、四三〇〇円の技能券の返品を売上としてレジ処理したために生じた八六〇〇円の不足金が競合して二四万六五〇〇円の余剰が生じたが、原因は後で判明してレジ上で訂正処理していることを認めることができ、それ以上に右の誤りによって被告会社の事務処理に混乱を生じさせたことを認めるに足りる証拠はない。

(三月一二日)

(証拠略)によるも、原告が一万円の不足金を生じさせたこと認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(三月一三日)

(証拠略)によると、三月一〇日分の二四万六五〇〇円の余剰金を訂正したことにより生じた形式的な二四万六五〇〇円の不足金と他の原因によって生じた一万九一〇〇円の余剰金が重なって二二万七四〇〇円の不足金が最終的に生じたことを認めることができる。

しかし、右二四万六五〇〇円の不足金は先の余剰金の訂正により生じたものであって、これをもって原告のミスによるということはできないし、また、右一万九一〇〇円の余剰金が原告のミスにより生じたことを認めるに足りる証拠はない。

(三月二六日)

吹田は、原告が券売機の売上をレジで入金処理したのに、券売機の現金をレジに入金しなかったため二一万九八〇〇円の不足金が生じたものであるという(〈証拠略〉)。

しかし、原告は、これを否定し、一応説得力のある説明をしていること(〈証拠略〉)、券売機内の現金は、原告以外にも竹森が出し入れしており(〈人証略〉)、同日、同人が券売機を開け、同日の日計表の精算をしていること(〈証拠略〉)からすると、券売機の現金の取扱いに関して不足金が生じたとしても、原告の行為によるものと直ちに断定できないから、右証拠(〈証拠略〉)は採用することはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(三月三〇日)

(証拠略)によると、三月三〇日の余剰金二一万九八〇〇円は、三月二六日の不足金分の訂正により形式的に生じた余剰金であることが認められるから、前記三月二六日の不足金の発生経緯を併せ考えると、右の訂正をもって原告のミスによるものということはできない。

(四月二日)

証拠(〈証拠略〉)によるも、原告が二万一五〇〇円の余剰金を生じさせたことを認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(四月三日)

(証拠略)によると、原告が五五〇〇円の不足金を生じさせたことを認めることはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(四月九日)

吹田は、五万円しか教習生から受領していないのにレジに五万九六〇〇円の入金処理をしたため不足金が生じたものであるという(〈証拠略〉)。

しかし、(証拠略)によっても、右の入金を原告がしたとの記載がないばかりか、日計表に記載された「0775 9、600未収の人」との記載は竹森が書いたものであること(〈証拠略〉)、レジ業務は、原告のみがしていたものではないから原告の行為であると直ちに断定できないこと、加えて原告はこれを否定していること(〈証拠略〉)に徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用できず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(四月一九日)

吹田は、原告が前日の精算時に入れなければならない五万円をこの日の日計表に記載したため生じた余剰金であるという(〈証拠略〉)。

しかし、原告は、吹田が釣り銭五万円をレジに入れたのに、レジへの記入をしなかったために生じたものであると説明し(〈証拠略〉)、その説明もあながち不合理ではないこと、この日の日計表の1欄に記載された「50,000」の筆跡は原告のものではないこと(〈証拠略〉)に徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用できず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(四月二〇日)

吹田は、原告がレジから一三万六七〇〇円を経理に持ち出したのに、日計表の7欄(〈証拠略〉)に記載しなかったため、不足金が生じたという(〈証拠略〉)。

しかし、(証拠略)によると、原告がレジの精算をした際、在高登録を誤ってしたので、湯浅課長の指示を仰いで再度精算を行ったが、途中の一三万六七〇〇円の売上がレジに入力されなかったこと、この売上の計上されていない日計表(〈証拠略〉)を一旦作成し、吹田の指示を仰いだところ、吹田は後は自らがする旨言うので、関係書類とともに同人に引き継いだこと、吹田は、レジから一三万六七〇〇円を回収するとともに、日計表の7欄にはこの点を記載すれば過不足が生じなかったが、右記載をしなかったため、計算上一三万六七〇〇円の不足金が生じたことを認めることができる。他方、原告がレジから一三万六七〇〇円を経理に持ち出したとの(証拠略)の記載は、(証拠略)に徴して採用できない。

右の事実によると、四月二〇日の一三万六七〇〇の(ママ)不足金の発生をもって、原告のみのミスによるものと非難することはできない。

(四月二一日)

(証拠略)によると、前日の不足金を訂正したため計算上生じた余剰金であることが認められ、前記の経過に徴すると、原告のミスにより生じたものとはいえない。

(五月一〇日)

(証拠略)によると、レジ精算中に教習生に販売した教習券一枚分について券日報に記載したがレジに入力するのを失念したために生じた余剰金であることが認められるが、それ以上に、被告会社の事務処理が混乱したことを認めるに足りる証拠はない。

(五月一九日)

(証拠略)によると、原告が精算前に経理に届けていた券売機の売上金を日計表に記載するのを失念し、吹田に問い合わせたが答えてもらえず、日計表に計算上三七万九六〇〇円の不足金と記載したことを認めることができ、これに反する(証拠略)の記載は、(証拠略)に徴して採用しない。

また、同日生じた不足金と右との差額である二九〇〇円の余剰金分については、原告がこれを生じさせたことを認めるに足りる証拠はない。

(五月二一日)

(証拠略)によると、前日の三七万九六〇〇円の不足金分の訂正により形式上余剰金が生じたものであることが認められ、これをもって原告のミスによるものということはできない。

(五月二六日)

吹田は、原告が日計表の三〇〇〇円の不足金があると記載された横に「券売機・・3000・・・お釣り」と記載してある(〈証拠略〉)ことから、原告がレジから釣り銭を出したが、これを補充するなどしなかったため生じたものであるという(〈証拠略〉)。

しかし、レジ業務は、原告のみが担当ではないことからすると、原告が右メモを書いたとしても直ちに原告が釣り銭をレジから出したものということはできないこと、仮処分時に作成した吹田の報告書(〈証拠略〉)では、原因不明とされ、(証拠略)の右記載を裏付ける証拠はないことに徴すると、右証拠(〈証拠略〉)をもっていまだ原告が三〇〇〇円の不足金を生じさせたものと認めるには至らない。

(五月二九日)

(証拠略)によると、前項の不足金分の訂正により形式上余剰金が生じたものであることが認められ、前記経過によれば、原告のミスであるということはできない。

(五月三〇日)

吹田は、原告が前日に経理に届けるためにとっておいた二六万円をレジに再び入金したため余剰金が発生したとし(〈証拠略〉)、(証拠略)(みどりのノート)にもその旨の記載がある。

しかし、吹田の右説明等を裏付ける証拠はなく、かえって、(証拠略)によると、吹田が前日のレジの締め時にレジに入金した二六万円の現金を、この日までに回収し忘れたために生じたものであることを認めることができることからすると、右証拠(〈証拠略〉)は採用できない。

(五月三一日)

吹田は、原告の前日のミスにより生じた余剰金を訂正したために不足金が発生したという(〈証拠略〉)。

しかし、前記経過に照らすと、この日の不足金を原告が生じさせたと認めることはできない。

(六月四日)

(証拠略)によると、返品された四〇〇〇円分の教習券を、被告においては現金と同様に扱うことになっているところ、原告がこの処理方法を正しくないと考え、現金扱いにしなかったため、形式的に四〇〇〇円の不足金が生じたものであること、日計表にその旨付記していること(〈証拠略〉)を認めることができるが、右の不足金を発生させたことによって、被告会社の事務処理に支障が生じたことを認めるに足りる証拠がないことからすると、原告の右処理をもって原告のミスとまでいうことはできない。

(六月五日)

(証拠略)によると、前日の訂正を行ったことにより形式的に余剰金が生じたに過ぎないことが認められ、これをもって原告のミスということができない。

(六月一二日)

吹田は、釣り銭用金銭のレジへの入力の際、原告が誤った金額を入力したために不足金が生じたものであるという(〈証拠略〉)が、右事実を裏付けるに足りる証拠はなく、かえって(証拠略)によると、原告は、当初日計表を正確に作成し、過不足金はなかったのに、吹田が後で日計表に根拠なく手を入れたことによって生じたものであることを認めることができ、右の事実に徴すると、(証拠略)は採用できない。

(六月一三日)

原告は、五万二三〇〇円の余剰金のうち四万七七〇〇円については釣り銭準備金の打ち間違いによる計算上の余剰金と何らかの原因により差額分四六〇〇円の余剰金が生じたものという(〈証拠略〉)が、(証拠略)によるも、これらの余剰金を原告が生じさせたことを認めるに至らず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(六月一六日)

吹田は、教習券を販売した際、釣り銭二〇〇円を教習生に渡し忘れたものであるという(〈証拠略〉)。

しかし、(証拠略)によるも、右行為を原告がしたものとの記載はなく、仮処分時の吹田の報告書(〈証拠略〉)においては原因不明とされており、かつ、原告は、これを否定していること(〈証拠略〉)、受付業務は、原告のみが担当していたものではないことに徴すると、(証拠略)は採用できない。

(六月一八日)

吹田は、原告が教習券の返品分を金券として数えなかったために不足金が生じたという(〈証拠略〉)。

しかし、証拠(〈証拠略〉)によると、被告会社においては、六月八日から返品された教習券はレジ処理して再使用しないことになったにもかかわらず、原告以外の者が返品された卒業検定券をレジ処理せず現金扱いしたところ、原告は、返品された券は現金として数えずに在高登録したため不足金が生じたものであることを認めることができる。

右の事実によると、原告の右取扱いをもって被告会社の指示に反する誤ったものであるということはできず、したがって、これによって不足金を生じたとしても、原告のミスによるものということはできない。

(六月一九日)

(証拠略)によると、前記不足金の訂正により形式上余剰金が生じたものであることが認められ、前記経過に照らすと、これをもって原告のミスであるということはできない。

(六月二一日)

(証拠略)によると、原告は、同日は休暇で休んでいたことが認められ、右の事実によると、同日の余剰金の発生は原告の行為に基づくものとはいえない。

(六月二二日)

原告が不足金を発生させたことを認めるに足りる証拠はない。

(六月二九日)

(証拠略)によると、レジの奥にあった釣り銭五〇〇〇円分が死角になっていたため、原告がこれに気づかずに在高登録し計算上不足金が生じたものであることが認められるが、これによって被告の業務に支障が生じたことを認めるに足りる証拠はない。

(六月三〇日)

吹田は、原告が券売機が詰まり釣り銭が出ないのでレジから出金したのに券売機からレジに現金を戻さなかったために不足金が生じたという(〈証拠略〉)。

しかし、原告は、これを否定している(〈証拠略〉)上、右証拠(〈証拠略〉)は推測に基づくものに過ぎず、これを裏付ける証拠はないから、右証拠を採用することはできない。

(七月二日)

(証拠略)によると、六月二九日の不足金の訂正をしたことにより形式上余剰金が生じたものに過ぎないことを認めることができるから、これをもって原告のミスということはできない。

((一)のまとめ)

右認定の事実によると、原告のミスが関与しているといい得るものは、一月二〇日、三月一〇日、四月二〇日、五月一〇日、五月一九日、六月二九日の過不足金に関するものに限られるというべきであるところ、これらの原告の行為により、被告会社の業務遂行に支障を生じさせたということはできないし、原告の右のようなミスが常態化していたとか、被告会社の経営及び事務処理を混乱させたということはできない。

(二) 主たる争点1(四)(2)(教習券などの過発行、行方不明を生じさせた)について

(一月九日)

吹田は、原告がレジを締めてから技能券一〇二枚を当日分として発行させたために行方不明を生じさせたといい(〈証拠略〉)、(証拠略)(みどりのノート)にも同旨の記載がある。

しかし、(証拠略)によると、同日の精算中に技能券が販売され、「カイセツショリ」後にこれが入力されたことがないことが認められる上、原告が当日の精算や右技能券一〇二枚の発行に関与したことを裏付ける証拠は吹田の供述や(証拠略)の記載以外になく、右供述等は(証拠略)に徴すると、にわかに信用し難いこと、吹田は、本人尋問においても原告のミスによって右事実が発生したことを合理的に説明していないこと等の諸事情に徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用できず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(一月一一日)

吹田は、原告がレジに打ち込んだ修了検定券を発行し漏らしたと報告したといい(〈証拠略〉)、(証拠略)(みどりのノート)にもその旨の記載がある。

しかし、同日の券日報の締めの字(〈証拠略〉)は原告のものと認めるに足りる証拠はなく、吹田も本人尋問においてこれを認める趣旨の供述をし、(証拠略)の記載が誤りであるかのごとき供述をしていること、原告は、右の事実を否定していること(〈証拠略〉)に徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用することはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(一月一二日)

吹田は、原告が券日報のD/T券(二枚綴り)の発行を〔4030ヨリ〕とすべきところ、〔4033ヨリ〕としたために二枚の行方不明が生じたという(〈証拠略〉)。

しかし、券日報(〈証拠略〉)の筆跡が原告のものであると認めるに足りる証拠はない(吹田も同旨の供述をする。)から、右証拠(〈証拠略〉)は採用することができない。

(一月一三日)

吹田は、原告が当初持参した券日報には、被告主張の券の不明、発行漏れがあり、原告に再度調査させ券日報を作成させたといい(〈証拠略〉)、(証拠略)(みどりのノート)にも同旨の記載がある。

しかし、(証拠略)によるも、当初作成された券日報の締めを原告は行っていないし、再度作成された券日報も原告が作成したものでなく、吹田も後者の券日報中に原告の筆跡があるか不明である旨供述すること、券日報の作成は原告のみがしていたわけではないことに徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用し難く、また、(証拠略)に、後日判明した誤りについて、「本日再注意」との記載があるなど作為がうかがわれることからすると、(証拠略)をにわかに信用し得るとはいい難い。

(一月三〇日)

吹田は、原告に調査を指示したところ、券日報の裏面にこれを認めるメモを書いたという(〈証拠略〉)。

しかし、(証拠略)によると、原告は、吹田から指示を受けたことはなく、右のメモを書いてはいるが、券日報の締めは原告がしたものでないことからすると、卒業検定券の渡し忘れや技能教習券の不明を原告が生じさせたとは断定できないこと、原告のみが受付業務に従事していたわけではないから原告が関与したと直ちに特定できないことに徴すると、吹田が原告に調査させたとの(証拠略)の記載はただちに採用できないし、卒業検定券の渡し忘れや技能教習券の不明を原告が生じさせたと即断することはできない。

(二月二八日)

吹田は、仮処分時には、原告に自分が指示して調べさせた結果判明したといい(〈証拠略〉)、本訴においては、他の者に調べさせたという(〈証拠略〉)などその説明が変遷し、変遷したことについて合理的説明がなされていないこと、原告は調査の指示を受けたことやミスを否定していること(〈証拠略〉)に徴すると、右証拠(〈証拠略〉)は採用できず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(三月九日)

(証拠略)によるも、原告が技能教習券二枚の不明を生じさせたことを認めるに至らないし、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(三月二六日)

吹田は、卒業した教習生二名の無効になった教習券二枚分と卒業証明書発行券一枚分をレジにおいて支払われた際の処理を原告が誤ったのであるという(〈証拠略〉)。

しかし、原告は、これを否定していること(〈証拠略〉)、吹田は、従前はD/T券四枚の発行漏れがあったと説明していた(〈証拠略〉)のに、本訴において右のように説明を変えたが、右の変遷について合理的説明がなされていないことに徴すると、(証拠略)は採用できず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

(四月七日)

原告がこの日に技能教習券一枚を不明にしたことを認めるに足りる証拠はない。

(五月二二日)

原告がこの日に技能教習券一〇枚を不明にしたことを認めるに足りる証拠はない。

(五月二七日)

原告がこの日に技能教習券一七枚を過発行したことを認めるに足りる証拠はない。

もっとも、吹田は、五月一九日に原告が〇九一一番の教習生に技能教習券を二組だぶって渡したので、一七枚の過発行になったとし(〈証拠略〉)、(証拠略)(みどりのノート)の八月二七日の欄にもその旨の記載がある。

しかし、原告は、二重発行があったとしても原告が発行したことを否定していること(〈証拠略〉)、原告のみが受付業務をしていたわけではないから原告の行為であると直ちには断定できないことに徴すると、右証拠(〈証拠略〉)をもって被告の右主張事実を認めるには至らない。

(八月四日)

吹田は、券日報の記載(〈証拠略〉)から、この日技能教習券の二枚が不明になったという(〈証拠略〉)。

しかし、(証拠略)によると、教習生が教習番号を誤って伝えたために技能教習券二枚が誤って発行され、そのことが券日報の累計欄に記載されているに過ぎないことが認められ、そうすると原告のミスで教習券が不明になったということはできない。

((二)のまとめ)

右認定の事実によると、教習券の発行に関し、原告にミスがあったとすることはできない。

(三) 主たる争点1(四)(3)(クレジットカードの処理のミス)について

(一月一六日)

(証拠略)によると、原告は、平成二年初めからクレジットカードの処理に従事するようになったこと、VISAカードの一〇万円以上の利用について、カード会社の承認の取得を怠ったこと、原告は、その後において同様のミスを犯していないことを認めることができる。

なお、吹田は、これが三回目のミスであるとの趣旨の記載を(証拠略)(みどりのノート)にしているが、原告は、これを否定している(〈証拠略〉)上、これを裏付ける証拠はないので、(証拠略)の記載は採用することはできない。

(四月五日)

(証拠略)によると、原告は、UCカードで受け付けた申込みを誤ってJCBの用紙に記載し、JCBに送付したが、その後訂正され、入金の遅れは生じていないことを認めることができる。

(四月二一日)

(1) (証拠略)(みどりのノート)には、原告が印鑑を忘れたままJCBに伝票を送付しようとした旨の記載がある。

しかし、原告は、これを否定していること(〈証拠略〉)、もともとJCB売上集計票には印鑑を捺印する欄はないこと(〈証拠略〉)に徴すると、右記載を信用することはできない。

また、原告が売上票でなく、加盟店控えを送付しようとしたことを認めるに足りる証拠はない。

(2) (証拠略)によると、原告は、JCBカード利用者に印紙を貼って領収書を渡したが、当時はこのような取扱がなされており、四月二三日になってから印紙を貼らない取扱に変更されたことを認めることができる。

そうすると、右の措置をもって、原告にミスがあったとすることはできない。

(六月六日)

(証拠略)(みどりのノート)には、原告が中村に対し、クレジットカード利用者に対し、領収証を発行するように指示したとの記載があるが、これを裏付ける証拠はないこと、原告は、これを否定している(〈証拠略〉)ことに徴すると、(証拠略)の右記載は信用できない。

(六月一九日)

(証拠略)によると、原告は、JCB加盟店控えを教習生に誤って渡したが、その後回収したため、業務に支障は生じていないことを認めることができる。

(七月一〇日)

(証拠略)によると、UCカードの売上を住友VISAカードの売上として誤ってレジ処理をしたが、カードの処理自体は正しく行われ、入金もなされているので、業務に支障は生じていないことを認めることができる。

(七月二七日)

(証拠略)(みどりのノート)には、原告が大信販のローン申込書を大信販に送付するのを忘れたと記載されている。

しかし、原告は、これを否定していること(〈証拠略〉)、これを裏付ける証拠はないことに徴すると、(証拠略)の右記載は信用できない。

(七月三一日)

(証拠略)(みどりのノート)には、VISAカードの売上票を机の中に放置していたとの記載がある。

しかし、(証拠略)によると、原告は、VISAカードの売上票を机の中に保管し、その後経理に届けたことを認めることができ、右事実に徴すると、右記載は信用できない。

(住友ローンの七月一六日入金分の被告用控えをカード会社に送付した件)

(証拠略)(みどりのノート)には、その旨の記載がある。

しかし、(証拠略)によると、カード会社の担当者が来校した際、誤って担当者に契約書とともに被告用控えも渡したが、その後返送されているので業務に支障は生じていないことを認めることができる。

(八月五日)

(証拠略)(みどりのノート)には、カードの売上票を机の中に放置していたとの記載がある。

しかし、(証拠略)によると、当日は日曜日で被告は営業していないことが認められるから、(証拠略)の右記載は信用できない。

((三)のまとめ)

右認定の事実によると、一月一六日、四月五日、六月一九日、七月一〇日のカードの処理と、七月一六日分のローンの処理には原告のミスがあるとの指摘は免れないものの、いずれも被告会社の業務に支障をきたす程のミスでなく、現に右支障をきたしていないということができる。

(四) 主たる争点1(四)(4)(原告が、被告従業員の残業時間などの給与計算処理の職務の遅滞を常態化させていたこと)について

(証拠略)(みどりのノート)の一月一七日欄には「20〆残業調べ再注意」、八月五日欄には「二一日一〇時までに残業計算を集計するように」との各記載があるが、これをもって職務が遅滞していたとまで直ちにいえないし、他に職務の遅滞があり、常態化していたことを認めるに足りる証拠はない。

(五) 主たる争点1(四)(5)、(6)(原告が入学希望者・教習生に対する適切な接客態度に欠け、トラブルを生じさせたこと、及び原告が免許取得のための視力などの検査をせずに入学手続を行ったり、視力障害などにより入学できない者について入学手続をしたこと)について

(1) 被告会社の菊池彰洋総務課長兼教務課長(当時)(以下、菊池という。)は、教習生との間にトラブルを生じたケースとして、〈1〉A子さんのケースとして午後七時以降の教習を希望しており入学させられないケースなのに入学受付をしたこと、〈2〉B子さんのケースとして教程一三の学科教習を受けていない者に受験資格を確認せず、誤って修了検定を受け付けたことをいう(〈証拠略〉)。

〈1〉について、原告は、これを否定していること(〈証拠略〉)、受付業務は原告のみが行っているわけではなく、原告がA子の受付をしたことを認めるに足りる証拠はないことに徴すると、(証拠略)の右記載を採用することはできない。

〈2〉について、(証拠略)によると、原告は、この女性の修了検定の受付をしたが、教習台帳でチェックする際に教程一三の学科教習を受けていないことを見落とし、受付をしてしまったことを認めることができる。

(2) 菊池は、C男さんのケースとして、受付時の適性検査において色彩識別能力が不合格なのに、原告が合格として受け付けたという(〈証拠略〉)。

しかし、原告はこれを否定し(〈証拠略〉)、受付業務は原告のみが行っているわけではなく、原告がC男の受付をしたとして指摘されたことがないことを認めることができることに徴すると、(証拠略)の右記載は採用することができない。

(3) 菊池は、原告のミスに対し再三注意をしていたとし、平成元年一二月二日に色彩識別検査の結果を願書に記載していなかった、同月九日に教習生が修了検定と卒業検定を誤って申し込んだのを見過ごした、同月一八日、視力検査不合格者の入学を受け付けたという(〈証拠略〉)。

しかし、原告は、これら菊池が指摘するミスがあったことを否定しており(〈証拠略〉)、(証拠略)の右記載を裏付ける具体的証拠がないことに徴すると、(証拠略)の右記載は直ちには採用できない。

(4) 菊池は、原告が入学受付及び書類の作成に関し、乱雑な処理をしたとして、(証拠略)に、また、入学受付の検査に際して乱雑な処理をしたとして、(証拠略)に、それぞれマーカーで丸く囲んだり、注記をした(〈証拠略〉)としている。

しかし、(証拠略)によると、次の事実を認めることができる。

イ ミスでないもの

(〈証拠略〉)

この教習生の入学申込時には、所持免許はなく、その後原付免許を取得したものであるから当初免許無しとして処理し、後に有と記載を変更した。

教習生が誤って記載を変更したものを訂正した。

(〈証拠略〉などの色彩識別検査がなされていないとの指摘)

教習生は、所持免許が有るので色彩識別検査は不要である。

(〈証拠略〉)

五月一四日に教習生の父親が代理で申し込み、七月二六日に本人が来校したので記載を訂正した。

(〈証拠略〉などの住民票なしとの指摘)

当時は、住民票なしでも受け付け、後で提出してもらうようにして処理していたが、問題にされていなかった。

ロ 教習生の都合で変更

(〈証拠略〉)

教習生の都合で一旦受付手続きが中断したため、教習生番号と開始日が訂正された。

(〈証拠略〉)

教習生は、四月一二日に当初来校したが、ローンを組むことになり、四月一八日に改めて入学手続を行ったので記載が訂正された。

(〈証拠略〉)

教習生は、六月七日に当初来校したが、所持金が不足したので、六月九日に改めて入学金を納付して手続したので記載が訂正された。

(〈証拠略〉)

教習生は、六月二五日に当初来校したが、都合で入学金を増額したので一旦受付手続を中断し、六月二七日に改めて手続を行い、記載が訂正された。

(〈証拠略〉)

教習生は、七月一九日に当初来校したが、無免許運転があったことが分かり、一旦受付手続を中断し、七月三一日に改めて入学手続を行ったので記載が訂正された。

ハ 他の人が行ったもの

(〈証拠略〉)

視力検査は原告がしたが、受付は担当してない。

(〈証拠略〉)

視力検査は原告がしたが、受付は担当してない。

ニ 原告が関係し、他の人とも複合

(〈証拠略〉)

他の人が書いた入学日を原告が訂正した。

(〈証拠略〉)

教習生番号を訂正したのは原告ではない。

ホ 重複検査

(〈証拠略〉)

視力検査と色彩識別検査は同じ機械で連続して行うため、所持免許のある者は色彩識別検査は不要であるが、便宜上重複して検査していたものである。

右の事実によると、菊池が指摘する(証拠略)のマーカーでチェックがなされた箇所が原告のミスによるということはできない。

また、右以外の(証拠略)のマーカーでチェックされた箇所には、教習生番号などが訂正されていたり、添付された住民票に本籍が抜けていたり、眼鏡使用条件の記載が抜けていたり、添付された誓約書に署名が抜けていたりしているなどの部分があるが、これらによって、教習生との間に無用なトラブルが生じたり、視力などの検査を忘れたり、欠格事由のある者を入学させたことを認めるに足りる証拠はない。

(人証略)は、自動二輪の免許所持者に対しては模擬運転装置(トレーチャー)の教習は不要であるのに、原告が受付でこの点の確認を見落とした旨証言するが、その証言内容は、具体性に欠け、あいまいであることから、これをもって特定の教習生との間にトラブルを生じさせたとまで認めることはできない。

((五)のまとめ)

右認定の事実によると、原告のミスとして明確なものは、前記のB子についての受付ミスがあるにすぎない。

(六) 以上の個別の解雇事由のほかに、被告は、原告が採用後、レジ業務及び教習券の発行に際して恒常的にミスをしていた旨も主張するので検討する。

(証拠略)には、右主張に沿う記載があるが、右認定の事実によると、平成二年においては、原告が恒常的なミスを犯していたとは到底いい難いし、平成元年において、原告がミスをしていたことにつき具体的な根拠・裏付けを認めることはできないことに徴すると、右証拠(〈証拠略〉)を直ちに採用することはできず、ほかに右の事実を認めるに足りる証拠はない。

3  本件解雇の効力について

右認定の事実を総合すると、被告主張の原告のミスのうち、原告のミスとして明らかなものは前記認定の少数のものに限られるところ、これらのミスは、大量の事務処理が要求される業務の中で起きた一部の単純なミスであって、大量に事務処理がなされるうちには一部に過誤が起きたとしてもやむを得ないというべきであり、また、右のミスの内容・原因についても判明しており、被告会社の業務遂行に支障をきたす程の重大なものではなく、現に右支障を発生させていないこと、原告は、受付事務等に関する責任者の地位にはないことからすると、原告について管理者としての責任を問うことはできない等の諸事情を認めることができ、これらの事情を総合勘案すると、原告の右行為をもって、被告の就業規則一二条所定の解雇事由である、「技能、能率、態度が著しく不良で、将来改善の見込みがないと認めたとき」及び「その他前号に準ずることがあったとき」に当たるということはできないから、被告の二次的解雇事由を認めることはできず、右解雇事由が認められない以上、その他の証拠を勘案するも、被告主張の一次的解雇事由も認めることはできない。

よって、本件解雇の意思表示は、その余の点について判断するまでもなく、無効である。

二  結論

以上の次第で、本件解雇は無効であるところ、被告は、原告に対し、平成二年九月二一日以降の就労及び賃金の支払いを拒否しているから、原告が被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び主文二項記載の賃金等請求権を有することに争いがないので、右賃金等支払いを求める各請求はいずれも理由がある。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松山恒昭 裁判官黒津英明、同太田敬司は、転任につき署名捺印できない。裁判長裁判官 松山恒昭)

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